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三菱電機 身体への負担が少ないがん粒子線治療装置 世界最高クラスの精密スキャニング照射法を開発

[ 2011/11/18 ]
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陽子線治療装置イメージ図(回転ガントリー内)
三菱電機株式会社は、がん治療に使用される粒子線治療装置用に、がん病巣へ世界最高クラスの精密照射ができる小スポットビームとハイブリッド・スキャニング照射法を開発した。今後、実証試験などを行い2012 年度から順次実用化をめざす。

開発の特長

1.世界最小クラスの照射ビームスポットにより正常細胞への影響を低減

・小スポットビームの開発により、陽子線の照射スポットサイズを世界最小クラスとなる従来比半分以下※1 の約3mm(1σ、水中)※2 を実現
・炭素線の照射スポットサイズについても将来的には従来比半分以下※1 の約1mm(1σ、空気中)※2 をめざす

※1 従来のスキャニング照射法との比較において(当社調べ)
※2 1σ(シグマ)とは全体の約68%の粒子が存在するスポットサイズのこと。照射点近傍で水中を通過した場合の「水中」サイズと、空気中のみを通過した場合の「空気中」サイズの2 種類の評価法がある

2.ビーム照射線量制御による連続照射を実現し、治療時間を短縮

・ハイブリッド・スキャニング照射法の開発により、次の照射スポットへの移動中のビーム照射線量を管理することで、病巣に沿った精密な連続照射を実現
・連続照射により治療時間を短縮

3.加速器から照射系まで、トータルシステム提供による高い安定性を発揮

・加速器や回転ガントリー※3 は、信頼性の高い従来の機器をそのまま採用
・ビーム位置と強度の高い安定性を実現する加速器を提供
・照射系装置内の真空化やヘリウム充填によりビーム散乱を軽減し、高精度化を実現

※3 回転ガントリー:任意の方向からビームを照射するための装置
開発推進体制

スキャニング照射技術を利用した治療装置の開発を推進するため以下の施策を実施している。

(1)ハウスマシンによる陽子線治療装置の開発

当社電力システム製作所(神戸市)内に粒子線高度利用研究棟(以下、ハウスマシン棟)を保有し、現在ハウスマシン棟にスキャニング照射法の検証用実証機を製作中。検証試験終了後は運転技術員のトレーニングセンターとして活用する。

(2)群馬大学との共同研究

当社製炭素線治療装置の納入先である群馬大学と共同研究を実施。産学の力を結集して将来技術の開発を進めている。

特長の補足

1.小スポットビーム

がん病巣周囲に重要臓器が存在している場合においては、重要臓器への被爆を避けるよう精密な照射ができる小スポットサイズのビームが必要。同社は今回、小スポットビームを実現するために以下の工夫を実施している。

(1)(陽子線)ビームの散乱を減らすためには、照射系装置内を真空化する必要がある。今回、極力真空中をビームが進むように装置を設計。また、真空にできない部分に関しては、装置内にヘリウムを充填し、空気よりビームの散乱が少ないヘリウム中を通過させる。ヘリウム容器の長さは可変で、照射位置直近までヘリウム中をビーム輸送することができる。

(2)(炭素線)陽子線と同様に極力真空中をビームが進むように装置を設計。最も細く絞ったビームを使用する場合、真空ダクトを照射位置直前まで延長する機構を備え、ビーム光学設計についても工夫しており、照射装置の直前に4 連の収束装置(四極電磁石)を配置してビームを極限まで絞っている。

2.ハイブリッド・スキャニング照射法

スキャニング照射法は、粒子線ビームを細く絞って、がん病巣をスポット(点)で塗りつぶしていく照射方法で、がん病巣の形状に沿って精密に線量分布を形成できる利点がある。また、ビーム利用効率が非常に高い特長もある。スキャニング照射法は、1 つのスポットを照射した後、次のスポットへの移動中にビームを停止するスポットスキャニング法と、ビームを停止せずに一定強度で連続で走査するラスタスキャニング法に大別される。同社が開発した「ハイブリッド・スキャニング」照射法は、上記2 つの方法の中間に位置するもので、スポットごとに照射線量を制御しながら、1 スポット照射ごとにビームは停止せず、次のスポットへの移動中もビームを連続で照射し続ける。これにより線量分布品質の向上と照射 時間の短縮という2 つの利点を兼ね備えることができる。※4

※4 同機能は12 年度から順次薬事承認申請予定。

3.トータルシステム

小スポットビームとハイブリッド・スキャニング照射法の実現には、高性能な加速器を使用したシステム全体としての性能達成が求められる。以下の当社の優れた加速器技術を用いてスキャニング照射に最適な粒子線治療装置を実現する。

(1)装置の製作精度や電流の安定性、優れたビーム設計技術によるビーム位置精度の高い安定性
(2)ビーム設計技術やビーム調整技術、制御技術を用いてビームの強度変調を少なくすることによるビーム強度の高い安定性

【お問い合わせ】
三菱電機株式会社
電力事業部 先端・医療システム部
〒100-8310 東京都千代田区丸の内二丁目7 番3 号
TEL 03-3218-2466 FAX 03-3218-9027