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磁石が不要で、信頼性と保守性が向上 世界初 APF 方式の陽子線治療装置用入射器を開発

[ 2010/05/20 ]
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三菱電機株式会社は、がん治療に使用される陽子線治療装置のビームを発射する入射器において、磁石を必要としないAPF(Alternating Phase Focusing 交替位相集束)方式の陽子線治療装置用入射器を世界で初めて開発した。本開発成果を、5 月20 日から22 日まで開催される第49 回粒子線治療世界会議で発表する。

おもな開発内容

1.世界初、磁石が不要のAPF 方式による陽子線治療装置用入射器を開発

・陽子(水素の原子核)を、磁石を使用せず電場によって収束させながら加速するAPF 方式の陽子線治療装置用入射器を世界で初めて開発
・電場を「のこぎり波型位相変調技術」で制御し、高品質なビームを実現
・磁石をなくしたことで構造が簡素化され、調整も容易になって信頼性と保守性が向上

2.高周波電力の供給電源を簡素化

・陽子線治療装置用入射器にレゾナントカプラ(磁気共鳴型電力分配)方式を世界で初めて適用
・陽子を加速する高周波電力の供給電源を1 台に集約して構成が簡素化
・高周波電力の位相調整が不要で保守性が向上

今後の展開

本入射器を陽子線治療装置システムの標準ラインアップに加え、粒子線治療の普及促進に取り組む。また、より高度に、より多くの患者を治療できる装置の開発を進める。

開発の背景

粒子線治療は放射線治療の1つで、従来のX 線やγ線による治療に比べ患部に集中的に照射できるため、副作用や身体機能の損失を最小限に抑えられるという特長がある。国内では2001 年7 月に先進医療の認可を受け、現在、公的医療機関6 施設、多目的研究機関1 施設、民間医療機関1 施設で治療や臨床研究が行われている。

この粒子線治療に用いる陽子や炭素イオンは、入射器からシンクロトロンに発射され、数百MeV(メガエレクトロンボルト)という高いエネルギーに加速される。従来の入射器は電場で加速しながらビームをしぼるのに十数個から数十個の磁石を必要とするが、構造が複雑で調整がむずかしく、信頼性と保守性の向上に限界があることから、磁石を使用しないAPF(Alternating Phase Focusing 交替位相集束)方式の入射器の開発が求められていた。

同社は今回、「のこぎり波型位相変調技術」を適用することにより、APF 方式の陽子線治療装置用入射器を世界で初めて開発した。

開発内容の詳細

1.世界初、磁石が不要のAPF 方式による陽子線治療装置用入射器を開発

重粒子である炭素線治療装置用入射器では磁石を使用せず電場によって陽子を収束させながら加速するAPF 方式の入射器が実用化されているが、質量の軽い陽子(水素の原子核)を扱う陽子線治療装置用の入射器は、粒子相互の反発力が大きいため、APF 方式で適正なビームを得ることは困難と考えられていた。

今回、電場の制御に「のこぎり波型位相変調技術」を適用して、ビームを絞る力の強さと間隔を制御することにより、APF 方式でビーム品質の高い陽子線治療装置用入射器を世界で初めて開発した。磁石をなくしたことで構造が簡素化され、調整も容易になって信頼性と保守性が向上した。

2.高周波電力の供給電源を簡素化

レゾナントカプラ(磁気共鳴型電力分配)方式の適用により、陽子を加速する高周波電力の供給電源を、従来の2 台から1 台に集約。これにより構成が簡素化され、複雑であった高周波電力の位相調整も不要となって保守性が向上した。

同社の粒子線治療への取り組み

放射線治療と加速器の両分野で約40 年にわたる実績とノウハウがあり、この2 つの技術を組み合わせて粒子線治療装置を開発し、2002 年に「陽子タイプ」の医療機器製造販売承認を取得。2005 年には世界で初めて炭素イオンと陽子を選択できる「炭素イオン/陽子タイプ」の医療機器製造販売承認を取得し、2010 年3 月には炭素イオン単独の「炭素イオンタイプ」の医療機器製造販売承認を取得していいる。

国内の粒子線施設は現在建設中のものも含め10 施設あり、そのうち7 施設が同社製。同社はこれまで入射器を外部から調達していたが、今回の開発により自社製作が可能となり、粒子線治療装置システム一式の設計・製作を自社で完結できるようになった。

【お問い合わせ】
三菱電機株式会社 電力事業部 磁気システム部
〒100-8310 東京都千代田区丸の内2 丁目7 番3 号
TEL(03)3218-2466 FAX(03)3218-9027