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HIMAC15周年記念講演会「重粒子線がん治療の15年」

[ 2009/11/10 ]
さる10月23日(金)、東京国際フォーラム(有楽町)にて、表題の講演会が開催された。重粒子による癌治療は、民放の医療番組でも取り上げられるほど注目度の高まっている治療法であり、この日の講演会も定員1,000名の会場はほぼ満席で、本治療法への関心、期待の大きさがうかがえた。
■講演1-5,000例の治療成果と臨床考察
講演1は、放射線医学総合研究所(放医研)重粒子医科学センター長 鎌田正氏の全体概要から始まった。切る必要のない重粒子線治療のメリットは疾患部位にかかわらず大きく、手術が困難な骨軟部肉腫や局所再発における完治率の高さなどが明らかにされた。また治療期間の短さや患者負担の軽さについても明言された。国内では群馬大学において治療開始目前となっているが、欧州先進国や中国でも複数の治療施設の建設が進められており、今後の癌治療の主流となる可能性が示唆された。
続いて、同じく放医研の医師らにより、頭頸部、肺、肝臓など各部位における5,000例の治療成果について、データの提示とともに詳しく報告された。通院治療が可能で社会復帰が早いなど、QOL向上にも高い評価を得ている本治療法であるが、特に注目すべきは、体力の問題などにより手術困難とされた患者、あるいは手術を望まない患者に対する効果である。特に機能温存がその後の生存率に大きく関与する肝細胞癌に関しては、本治療に関連した死亡例や肝不全例は一件もみられず、2回の照射においても有害事象はみられなかったとのデータが示された。このような副作用の低さは、前立腺癌や直腸癌においても同様のようである。ただし、腫瘍が消化管に接している場合、重粒子治療は原則禁忌となるようで、さらなる臨床研究が必要と思われた。
施設別の成績に関しては、直腸癌における5年生存率の高さでみた場合、放医研がきわめて高いという頼もしい報告もなされた。
切除術が主流であった骨軟部腫瘍については、高齢者や体幹部切除に伴う機能損失が大きい症例において最もよい適応の1つと考えられ、今後、切除手術に代わり得る治療法となる可能性が示された。
また、治療普及のネックとなるのではと思われた治療費については、実際のところ、抗癌剤との比較データではさほど高額とは思えず、今後保険適用となる可能性を鑑みた場合、数多くの利点を損なうものではないことが理解できた。
■講演2-普及のための施設建設
講演2は、放医研重粒子センターの野田氏が、おもに施設建設計画について詳しく語った。適応患者の多さに比較し、いまだHIMACは大規模で高価であること、今後はより小型化、かつ安価で提供できる施設が必要で、現状のHIMACの1/3の大きさと価格を実現すべく、各地の重粒子施設で研究が進められていると話された。
 続いて群馬大学重粒子線医学研究センターの山田氏は、小型化の実現のために必要最小限の機能に特化した装置の開発について、設計図の提示も含め詳しく講演された。
 この治療法の普及を妨げる最大の要因は「施設建設・運営にかかるコストの高さ」である。群馬大学では、治療施設の小型化による炭素線治療の普及を図るべく、放医研の支援を受けて研究を進めている。2007年2月に建設が開始された群馬大学内の施設は2008年10月に完成し、現在はビーム加速試験が進行中であるという。最初の治療は2010年3月を予定しているといい、経過報告が待たれる。
休憩を挟んで行われたパネル討論会では、活発な意見交換がなされた。
さらなる進歩、普及に向けては、一般への周知やそのためのメディアへの露出、正しいデータの供出も今後さらに必要となるであろうと思われる。癌撲滅へ向けた大きな一歩として、本誌でも引き続き注目していきたい。

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