HOME > LOOK UP > 本誌を2 倍楽しむ! トレセン最前線! <第2回>

本誌を2 倍楽しむ! トレセン最前線! <第2回>


本誌を2 倍楽しむ! トレセン最前線!<第2回>
本誌映像情報メディカルで連載の 「明日のための医療~トレーニングセンター最前線~」 では、医療の研修を目的とした各施設の取り組みを紹介しています。Web版では、インタビューや本誌では掲載しきれなかった未公開写真をどっさりと紹介します。

※ 施設紹介記事は 「映像情報メディカル 2009年5月号」 に掲載されています!



カテーテル器具から体温計、さらには輸液剤といった幅広い製品を手がけてますね

弊社は創業以来、ガラスの体温計1本で事業を行ってきました。高度成長期に入る頃には次のビジネスを模索しはじめたのですが、その頃、医療器具のリュースによる感染症が医療現場の課題になっていることに着目しました。

“リュース” を “ディスポーザブル” に、大量生産、大量消費型の産業モデルで台頭できないかと考えたのです。私どもはプラスチックをコア技術にしようと研究をはじめ、点滴の容器や輸血のバックをそれまでのガラスからプラスチックへと変えていきました。現在でもそれが基本になっています。

私どもは医療機器だけのメーカでもありません。薬だけのメーカでもありません。デバイスと薬を持ち、「薬とデバイスとの融合」 など、“ユニークな技術をもって 「人にやさしい医療」 を実現する” ことを目標としている、そういうメーカなのです。
深水淳一氏





メディカルプラネックス設立の経緯をお聞かせください

メディカルプラネックスは2002年6月、研究開発センターに隣接して建設しました。先端的な医療技術の開発と普及を目的として、医療従事者の方々とコラボレーションしながら作り上げたものです。そして2007年には、個々の医療者のトレーニングだけでなくチーム医療のトレーニングも行える場として、イースト棟を開設しました。

2000年代に入ると、多発する医療事故を含む医療安全の問題がクローズアップされはじめました。現代医療がますます高度化し、複雑化が進むなか、頻発するヒヤリハット事例や医療事故は医療従事者のスキルに起因することが多いといわれていますが、日本には本格的な実践的トレーニング設備を備えた施設はほとんどありませんでした。

当施設は、医師、看護師、臨床工学技士など医療関係者の方に高度な医療技術を必要とする医療機器を実際にご使用いただき、トレーニングを行える施設として高い評価をいただいております。すでに3万人を超す多くのお客様にお越しいただきました。

現在、私どもの売上げの約50%を占めるのはホスピタル領域の注射関連製品です。現状では、国内のヒヤリハットの約30%は注射にかかわる処置、与薬で発生しているといわれており、米国では約40%を占めています。ヒヤリハットは配置変えなどでその部署に慣れていないときに起こりやすいといわれています。施術者の年齢は関係ないのです。ならば、いかにしてそのリスクを下げるか? そこで私どもは、シミュレーションが最も有効だと考えました。

イースト棟では、ヒヤリハット事例を含めた病院で起こりうるあらゆるトラブルを想定したシミュレーション、またそれらに対応するためのチーム医療トレーニングが行えます。ここでは、現場のなかに潜むさまざまな問題点をえぐり出し、皆で解決する場として活用されると同時に、個々の “気づき” が生まれる場として役立てられています。
Pranex West外観
メディカルプラネックス ウエスト外観

Pranex East外観
メディカルプラネックス イースト外観



メディカルプラネックスの概要と特長をお聞かせください

ウエスト棟には、X線造影室、オペ室、内視鏡室があり、ここでは実際に動物を用いての実験を行っています。私どもはここを “ウェットラボ” とよんでいますが、ここでは、手技を途中で止めてみる、ちょっと違ったことをやってみる、くり返し行う、というような、頭の中にはあるが治療行為中には行えないようなことを、豚を用いて行ってみることができます。

※生体での実験に際しては、苦痛を与えないこと、手厚く供養するなどの倫理規定が設けられており、当施設でも遵守している。また、規定から外れる実験に対しては、ユーザ様の申し出を断っている。

イースト棟では、先ほど述べましたように、病院全体を考えたシミュレーションが行える空間となっています。動物実験を行わないイースト棟はドライラボと呼んでいますが、ウェットとドライが併設したトレーニング施設は珍しいと思います。

私どもが考えているテーマは 「医療安全」 です。そしてこの医療安全を考えるとき、私どもは米国の病院機能評価が出したモデルを参考にしています。その1つは、 “誰が” “いつ行っても” “同じ答えが出る” というものです。産業界が得意としているモデルですが、これは病院でも必要なことです。

医療の世界の特長として “患者の個別性” ということがありますが、そのためには個々の医療者のレベルを上げ、また医療者1人で行えないところはチームワークで補うことが必要です。当施設では、 “実践的な研修” と “チーム医療” といった領域でも、よりよい医療を実現するための提案を行っています。

また、私どもの取り組みとして、バックグラウンドが違う人たちの出会いの場として、他職種間の連携を向上させるといったプログラムも医療者と協力して企画しています。いくつもの病院の診療科が一同に介し、合同でプログラムを行うのです。このような他流試合を実施することにより、お互いに刺激を受け、若い先生方は他の病院ではどのように行っているのか、自分達の医療のレベルはどこにかるのかを再認識することができるのです。このプログラムは医療の底上げにつながると思っております。
ウエスト棟 オペ室
ウエスト棟 オペ室

イースト棟 ホスピタルスタジオ
イースト棟 ホスピタルスタジオ



2008年より、術中での “立ち会い自主規制” が実施されましたが、テルモではどのように捉えていますか?

“立ち会い自主規制” は、医療機器の公正な商習慣確立のためには必要なことだと思っています。

もちろん、『立ち会い実施確認書』 を医療機関と取り交わすことによって、たとえば製品納入時の “適正使用” にかかわる説明や、あるいは医療機器の “安全使用” の情報提供のための立ち会いは、今後も可能ですし必要なことだと思っています。

このような活動は、これまで以上に積極的にとりくんでいきたいと考えています。というのも、医療機器にとって、現場の声を直接伺うことは非常に重要だからです。薬は研究所で作れますが、医療機器は現場で叩かれながら改良・改善を繰り返していくものだと思うからです。
深水淳一氏




今後の取り組みや展望をお聞かせください

より質の高い医療を患者さんに提供するための手段として、シミュレーションは最も有効な手段の1つだと思っています。そのため、よりウェットとドライをミックスした、さらにリアリティの高いシミュレータを作っていく必要があると思っています。

シミュレータの開発はメーカにとっても医療従事者にとっても大きなメリットがあります。シミュレータを作るということは、起こり得るあらゆるリスクをすべて文章化しなければなりません。これまで個人個人が経験値として知っていたことを文章化するのはとても大変な作業です。それをあえて行う作業を通じ、医療の標準化の一歩になると思うからです。

これは、産業界における “匠” とよばれる人たちの、その技術をいかに伝承させるかということと同じだと思います。匠の技術をすべての人のスキルとするには、シミュレーションによる言語化は欠かせないものなのです。

また、シミュレーションには “映像” も重要な要素です。中心静脈でのカテーテル手技で事故が多いのはなぜか? 針を刺した後、ガイドワイヤを入れる際、左手で針を押さえながら右手でワイヤを取りにいきます。このとき、左手がぶれるのです。この手技を映像で撮っていれば、どれだけぶれているかを目で確認することができます。

しかし、シミュレータをつくることはとてもむずかしいことだと感じています。私どもは、日本でシミュレータを作れる企業がないかずっと探しているのですが、みつからず、しかたなく欧米や欧州の企業にお願いすることになります。日本の映像技術、ロボット技術は世界でも高水準なのですが、これらを融合することが日本は苦手なんですね。

シミュレーションとは “再現” です。現在行っていることを再現することにより、どこに課題があるかが明確になります。なんとなく察しはついているという事柄を、実際に証明することができるのです。シミュレーションのもつ可能性は、医療現場だけでなくわれわれメーカにとっても大きなものであると確信しています。

われわれは独自の基本プログラムをもっていますが、それに固執はしておりません。イースト棟では、持ち込み企画を積極的に行っています。各病院から持ち込まれた企画を何年も行っているうちに、どの施設でも当てはまり行うことのできる、医療の標準化ができることを期待しているのです。

また、病院から持ち込まれるプログラムによって、医療の現場でかかえている問題点を知ることができます。そのなかで、私どもの製品が改善の一助けになる役割を果たせるのならば嬉しいことですし、今後の製品開発の大きな参考にもなるのです。

私どもには、まだまだ気づいていない点がたくさんあります。皆さんから、 「こんなこともできるよ」 「こんなことをやろうよ」 というような意見をもっと多くいただきたいと思っております。そして、より多くの患者様によりよい医療を提供できるよう、今後も邁進してまいりたいと思っております。
血管系IVRシミュレータ
血管系IVRシミュレータ

カテーテル手術シミュレータ
カテーテル手術シミュレータ

腹膜透析シミュレータ
腹膜透析シミュレータ



本誌では掲載しきれなかった写真を一挙公開!


ロビー ロビー

オペ室やシミュレーション室から一歩外に出ると、そこはさまざまな絵画や彫刻が飾られた、癒しの空間となっている。この開放的なスペースで研修での疲れをとり、リラックスすることができる。

在宅医療 在宅医療シミュレーション

自宅で酸素療法、腹膜透析を行う際、どのよな状態で使うことになるのか体験することがでる。 在宅で腹膜透析を行うと、約1~2時間かかるという。またバック交換を1日数回、1ヵ月行うと、透析液の箱だけで押入が埋まるくらいの量となる。

展示室① 展示室①

ウエスト棟2階の展示室では、同社の理念や歩んできた歴史を、製品とともに見学することができる。

展示室② -体温計- 展示室② -ガラス体温計-

ガラスの体温計は、同社が一番最初に手がけた製品である。戦時中、ドイツから輸入していた体温計が入ってこなくなり、国産の優秀な体温計を作るため、同社の前身である 「赤線検温器株式会社」 が設立された。当時、ガラス体温計を作る際、人間の手で引っ張りガラスを作っていた。まさに職人技の世界である。

展示室③ -輸液剤- 展示室③ -輸液剤-

ヒヤリ・ハットに繋がりやすい薬剤取り違えを防止するため、同社では認知心理学に基づいた表示デザインをすべての輸液バックに採用している。作業中でも読みやすいよう、薬剤名はポート部近くに表示されている。

展示室④ -人工血管- 展示室④ -人工血管-

人工血管は、動脈瘤や、血管狭窄などの病んだ血管の代わりに、その血管の置き換え、もしくはパイパス経路を作成するために用いられる。また、人工透析をする際のシャント用としても使われる。今後、高齢化の進展と高血圧、糖尿病などの生活習慣病の増加により、人工血管を必要とする疾患がますます増加するものと予測される。

展示室⑤ -補助人工心臓- 展示室⑤ -補助人工心臓-

同社の補助人工心臓は、遠心ポンプ内部の羽根車の回転により血液を押し出す連続流型であり、同社独自の羽根車を磁気で浮かせて回す、世界初の磁気浮上型遠心ポンプ方式を採用している。




施設紹介記事は 「映像情報メディカル 2009年5月号」 で掲載!