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ZEXIRAのある風景 ―稲城市立病院(東京都稲城市)


稲城市立病院



緑豊かなベッドタウン・東京都稲城市に位置する稲城市立病院は、1946年に開設された。新築改築を経て、1998年には高度化・多様化する医療ニーズに応える形で最新の医療設備と病院機能を備えた現在の新病院棟に生まれ変わっている。

2002年リハビリテーション室増改築、2年後には救急外来棟増改築および核医学検査新設、さらに2012年には健診・外来棟が新設された。内部には化学療法室や放射線治療室などを設置しており、同院の医療設備の充実度が伺える。市立病院として地域に根差した取り組みに徹する同院について紹介する。



稲城市立病院の地域における位置づけ

宍戸敏彦 氏
放射線科診療放射線技師長
宍戸敏彦 氏
同院放射線科診療放射線技師長の宍戸敏彦氏は、同院の地域における位置づけについて次のように 語る。「8万5千人の稲城市民を中心に、近隣の多摩市、府中市、川崎市など、診療圏人口は30万人といわれています。住民の皆様に安心できる信頼とぬくもりのある医療を提供し、地域の中核病院としての役割と自治体病院としての使命を果たすよう、稲城市医師会および地域の医療機関との連携に努めています」。

都心へ通勤する方が多いファミリー層を主としたベッドタウンとしての稲城市の特徴について 「これは稲城市だけではなく、近隣の地域にもいえることだと思いますが、都心に近く、一家の働き手は平日は都心へ通勤しているので、外来でいらっしゃる方はとくに高齢者の方と子どもさんが多いです」 と同氏。「ですから、質の高い検査を提供することはもちろんですが、検査を行う際に患者さんの転倒などの事故が起きないようにすることや、患者さんの取り違い、誤認防止についても重要視しています」 と、地域特性に応じた対応を行っている。


地域連携で実現する健康管理体制

稲城市立病院(東京都稲城市)
稲城市立病院に隣接する健診・外来棟および健康プラザと
連携し、地域の健康管理に注力している。
同院では、“病気にさせない病院” を実現するため健診部門にも力を入れている。「稲城市は、病気にならないような健康づくり、身体づくりをしましょうということで健診センターを作り、できるだけ早く病気を見つけることを目指しています。それから健診センターと合築した市の施設である健康プラザには、プールなどを完備しています。健康管理に積極的に取り組むことで病気にならない身体づくりの意識を高めようというものです。今後は健康プラザと連携して、生活習慣病の対策や妊婦さんの産後の体力づくりなどにも力を入れていくつもりです」 と、宍戸氏は地域一体となった健康管理体制の充実化について言及した。

また地域連携という側面では、大学病院や近隣の医療機関とのネットワークを作っている。患者のプライバシー保護を図りながら、地域の医療機関と通信回線で結び、患者の同意のもと同院の電子カルテやCT、MRI の画像データなどを共有している。「今までは電話で予約をしていましたが、なかなか全部の検査を電話でというわけにはいきませんでしたので、ウェブ上でCT、MRI の検査予約を行えるシステムを構築しました。今後は、大腸X線検査等、他の検査予約もウェブ上で行うようになると思います」 と宍戸氏。とくに小児救急の診療は、地域の小児科医と同院の医師が連携することにより、地域における小児夜間・休日診療体制の確保を図っている。

さらに同院は、公立病院初の免震工法を採用し、安全面にも注力している。また、近隣のクリーン センターからの熱温水を、施設の冷暖房や健康プラザ内の温水プールに利用し、JR 武蔵野線トン ネルの湧き水をトイレの洗浄水に利用するなど、エコ活動にも積極的だ。


幅広い領域に活用できる装置として機種選考

池田俊昭 氏
放射線科部長
池田俊昭 氏
稲城市立病院では、2011年9月に東芝製のFPD搭載デジタルX線TVシステムZEXIRAを2台導入した。同院放射線科部長の池田俊昭氏に導入の経緯を伺った。「マルチパーパスに使える装置ということで、まず機種を考えました。透視の装置というのは10年近く使うことが普通ですから、今後の医療現場の動向を考えて、I.I.-DR ではなく、予算的に無理してでもやはりフラットパネルディテクタ(FPD)を入れたほうがいいだろうということで、FPD搭載型の装置で機種選考に入りました。そしてFPDを使うメリットとして、まず視野が広くとれるということを考え、17×17インチの装置にしようとなりました」 と、1つ目の選考基準を語った。

FPDには直接変換方式もあるが、池田氏は、同院での部屋の温度設定や使い方を考えたときに間接変換方式のほうが扱いやすく、コスト面も含めて日常業務ではより使いやすいと判断したという。「装置メーカにもよりますが、間接と直接を比較した場合に、最近の傾向として間接のほうがランニングコストを抑えられると思いました。年間保守契約もFPD代を込みにして考えたときに金額の違いが出てきました。温度などとくに気にすることなく通常の環境で検査ができるという利点などもあり、東芝さんの装置で、ということになりました」 と池田氏。

同院の透視検査室は消化管造影検査だけでなく、内視鏡下での治療などにも使われている。
家後哲夫 氏
放射線科診療放射線技師
家後哲夫 氏

ほかにも、整形外科領域の関節腔造影やミエログラフィ、そして、婦人科、泌尿器科、小児科など、あらゆる領域で使われている。つまり、ZEXIRAのさまざまな検査に活用できるという特長は、選定の大きな判断材料になったといえるだろう。

「本当に多目的に何不自由なく使わせてもらっています」 と、同院放射線科の診療放射線技師、家後哲夫氏。ZEXIRAを導入する際、高機能機種だけに操作に戸惑うこともあるのではないかと思っていたが、まったく戸惑うことなく導入当初から普通に使うことができたという。「その科専用の装置が置けるほど当院は大きくないですから、どの部屋でも同じことができるセッティングにしています」 と同氏。ZEXIRAを2台導入した理由には、そんな効率も考えてのことのようだ。


撮影像、透視像ともに高いレベルで診断に適した画像

PACSベースによるモニタ診断
読影はPACSベースによるモニタ診断を行っている。
ZEXIRAのFPDによる優位性も実感できる。
実際にZEXIRAを導入してみて、「画像の解像度が高いため、拡大表示をしても画が粗くなることはなく安心して診断できる」 と、池田氏の画像に対する満足度は高い。同院では、読影をフィルムレス化しており、PACSベースによるモニタ診断を解像度5Mピクセルのモノクロモニタ2面を3台設置して行っている。そこでZEXIRAのFPDによる優位性も実感しているという。

「以前に比べて今まで見えなかったものが見えるほど、透視が非常によく見えるので、検査に少し没頭しすぎてしまうことがあるくらい、画質に対しては非常に満足しています」 と家後氏。ZEXIRAには画像処理のさまざまな機能が備わっているが、ユーザ側でこれらの機能を調整せずとも、標準設定の状態そのままで何不自由なく使えているという。撮影像を診断する医師、透視像で検査を進める技師ともに、その画質には満足しているようだ。

17×17インチの広い視野も評価が高い。「以前のアナログシステムでは、透視で確認できる範囲(I.I. の視野)と撮影したフィルムで確認できる範囲が異なりましたが、ZEXIRAでは撮影と同じ範囲を透視で確認できます。これは本当に助かりますね。たとえば大腸検査で、一番先頭のバリウムの位置も確認しておく必要があるなというときには視野を広げて見られますしね」 と、検査効率も飛躍的に向上している。
ZEXIRAはフィルムレスな上、あらゆる領域での検査に活用できる。そのため、検査室のモニタを天井吊りの4面モニタ台にしているのも同院の特徴のひとつ。「モニタにはビデオ端子をつけているので内視鏡の画面を表示したりして、複数のモニタを同時に使っています」 と池田氏。ZEXIRAの透視像と撮影像、内視鏡の画像を同じ視野内に捉えることができ、加えて過去の検査や他の装置による検査画像を検査しながら同時に確認できることは、検査効率の向上に役立っているようだ。4 面のうち2面は、基本的に内視鏡用と電子カルテ用に割り振ってあるが、各モニタの使い方は状況に応じて臨機応変に対応さ せている。


低レートのパルス透視で実現する低被ばく検査

寺田美里 氏
放射線科診療放射線技師
寺田美里 氏
ZEXIRAが導入されたことで、検査方法に変化が生まれたという。
透視機能には、連続透視とパルス透視の2種類があるが、稲城市立病院の放射線科では主にパルス透視を使っている。パルスレートは基本的に7.5 fps。ほとんどのケースにおいて、15fpsまで出す必要性は感じないという。「パルス透視7.5 fpsの場合、1秒間に7.5画像ですから、連続透視や高レートのパルス透視に比べると画の動きは滑らかではありません。でもすぐに慣れてしまいましたし、それをカバーするくらい画質が良いので問題ありません」 と家後氏。

基本的に低いレートのパルス透視による低被ばく検査を行っている。同院放射線科の診療放射線技師、寺田美里氏は 「側面にしたときにちょっと線量が足りないかなと思うこともありましたが、絞りなどをうまく調整すれば大丈夫でした」 と語る。わざわざ連続透視や高いレートのパルス透視で検査をしなくても対応できるケースがほとんどのようだ。ZEXIRAは、低レートの透視像を活用することで、必要最小限の線量で十分な検査を行うALARA(As Low As Reasonably Achievable)の原則に基づく被ばく低減に貢献する装置といえるだろう。


技師目線で語る『ZEXIRA』のこだわり

ZEXIRA遠隔操作卓
ZEXIRAは遠隔操作卓にも、ユーザ目線に立ったこだわりが
施されている。
画質はもちろんのこと、ユーザ目線に立ったこだわりが細部にまで施されているのもZEXIRAの特長のひとつ。寺田氏は、ラウンドシェイプ型の天板が、従来のフラットなものより動きやすく、高齢者など動くのが大変な患者にとっても負担が少ないと語る。「一般的なフラットな天板とZEXIRAの天板がどう違うのか試したことがありました。ZEXIRAは、ラウンドシェイプのおかげで、天板の上での身体の回転がすごく自然な流れでスムーズでした。仰向けの状態で寝てみると、身体への負担が少ないと身をもって感じました」 と、実体験を話してくれた。さらに胃の検査において、うつ伏せで頭を下げるという状態でも、 圧迫感がラウンドシェイプ型の天板では軽減され、患者に優しいと、日々接する患者の反応を目の当 たりにしている技師目線がその満足度を物語る。

ZEXIRAの寝台は、水平状態で床面から天板までが48cm、立位状態でも床面からフットレストまでが6cm と、非常に低い位置を確保することにより、患者の乗り降りがしやすい配慮がなされている。また、患者が握りやすく滑りにくいよう考えられた段付ハンドグリップや、転倒事故防止に効果を発揮するあんしん起倒モードを装備しており、立位になる前に寝台が自動的に一旦停止する患者にやさしい機能は、高齢者や子どもの来院が多い同院のニーズに合っているようだ。

また寝台の動きがスムーズなため、寝台の動作が検査の流れを妨げることがなく、検査時間の短縮にもつながっているという。「逆傾斜で頭を下げた状態というのは、目をつぶって逆立ちするのと同じくらいに感じますので、その時間がスッといってすぐ戻れるというのは患者さんにとっても楽ですよね」 と家後氏。寺田氏も実際に寝台に乗り、傾けてもらって体感するなど、検査を受けられる方々の立場を大切にしながら業務にあたっている。

運用してみて実感できる操作性についても、技師目線ならではの視点が垣間見える。家後氏は、「ZEXIRAは照射野ランプの点灯スイッチが遠隔操作卓の上にもあるんです。検査開始前など、以前の装置では、観察部位を確認するために透視をして患者さんと照射野の位置関係を調整することが当たり前でしたが、ここで照射野ランプをつけて事前に位置を合わせてあげると、その分の被ばくを減らせるというメリットがありますね」 と、機能としては些細なことのようでも運用においては非常に重要なことと前置きをしながら語る。医師と技師がコンビで行う透視の検査では、「位置を合わせるので透視出します」 というのが合言葉のようによく交わされる会話だったそうだが、そういったやりとりがなくてもスムーズに業務ができるようになったという。実運用において、ZEXIRAの細部にわたるこだわりが感じられる エピソードだ。


被ばくは増えず情報量が増える透視収集

放射線科スタッフ
ZEXIRAとともに放射線科スタッフの皆さん。
透視収集の機能も被ばく低減につながると家後氏。ZEXIRA は、簡単に検査中の透視像を保存することができる。「透視をしているときに何かあるなと思ったら、透視収集をしておけばあとで読影者に見せられます。透視の線量はそのままですし、被ばくが増えているわけじゃないのに情報が増えるというのは嬉しいことなんですよ」 と、客観性が高く有効な機能と指摘する。もちろんこれは、透視で十分に観察できているからこそ実現可能な運用であろう。

透視収集は、十分な線量をかける撮影像に比べれば画質はやや落ちるが、画像を取得するタイミングを外したくない場面では、有効なケースが少なくないという。「小児科では、尿路感染による発熱に対して排尿時膀胱造影(VCUG)を行うことがあります。以前は、排尿の瞬間を狙い、排尿開始直後に膀胱側面、男児なら排尿中に膀胱尿道斜位、排尿終了時に腹部正面、腎盂尿管に逆流があれば膀胱に戻ってから腹部正面を撮影していました。この検査をZEXIRAでは、排尿開始時から排尿中は透視収集で行っています。つまり2回分(排尿開始直後、排尿中)の撮影がなくなりましたので、以前よりも少ない線量で、撮影のタイミングを気にすることなく必要なデータを得ることができています」 と家後氏。とくに被ばくを気にする小児の検査において、線量を増やすことなく必要な情報を得ており、実用度の高さが伺える。

透視収集はボタンひとつで行える。そのため、検査中に咄嗟の判断で対応することも多いようだ。「検査における動画というのは、食道などで連続撮影というのがありますけど、それはその分だけX線を出していますので、被ばくもちゃんとおまけでついてきてしまいます。透視収集なら被ばくのおまけがついてこないので、患者さんにとっても術者にとっても大きなメリットになります」 と、高い評価を得ている。

任意型の胃がん検診では食道の撮影も行われるが、食道を確実に撮るために時間をかけすぎてしまうと、胃の観察をし始める前に胃からバリウムが流れてしまうためあまり時間はかけたくない。そこで透視収集により、飲んでいるところをそのまま透視でとっておくというのもこれからの検査の方法のひとつではないかと、見える透視像の活用方法の広がりに期待も膨らむ。


地域に根差した病院づくり

稲城市立病院は、市立病院として稲城市をはじめ診療圏の住民の健康管理、そしてフィードバックが重要と宍戸氏は話す。地域の中核病院といっても公立病院である限り、どのような患者も積極的に受け入れていかなければならない。こうした姿勢こそが地域に根差していくということなのであろう。


稲城市立病院

 
〒206-0801
東京都稲城市大丸1171
TEL. 042-377-0931
http://www.hospital.inagi.tokyo.jp/
・ 診療科目:
内科、外科、整形外科、産婦人科、皮膚科、泌尿器科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、精神科、脳神経外科、呼吸器科、消化器科、循環器科、放射線科、神経内科、麻酔科

・ 病床数:入院290床
・ 診療指定: 二次救急医療機関、災害拠点病院(いずれも東京都指定)

   稲城市立病院