HOME > Cutting Edge Report > Raffineのある風景 ―船員保険 北海道健康管理センター

Raffineのある風景 ―船員保険 北海道健康管理センター


船員保険 北海道健康管理センター


はじめに
“病院で完結する医療”から“地域で完結する医療”へ

高橋亘氏
センター長・高橋亘氏。
「東日本大震災で被害を受けた多くの船の処
理が大変ですが、これらの船には断熱用にア
スベストが使われていることが多く、今後は関
係者の健康被害が生まれる可能性があり、
センターでは予防を強く意識しています」
今回ご紹介する船員保険 北海道健康管理センター(以下:センター)は、札幌の地に開設されて30年あまりを経過する健診施設で、社会保険の中でも主に船員や漁業関係者を対象に健康診断を行ってきた。

国内の産業構造の変化もあり、「本来の業務対象である船員や漁業従事者は年々減少し、一般の方々の受診が圧倒的に多くなってきている現状から、地域の方々や関連する企業に広く貢献するために、巡回健診だけでなく施設での人間ドックなどの業務も行っています」、こう話すのはセンター長・高橋亘氏。受診者数は巡回と施設を合わせて外来で1日約240人、年間では施設外来と巡回を合わせて約7万7千人に及び、巡回健診は北海道と青森県の全域をカバーしている。

センターの基本方針は 「健康診断で早期発見し予防医学の観点から、病気が重篤になる前に助ける」。高橋氏によれば、健診が効力を発揮するのは 「やはり、がん」。「特に胃がんは健康診断で早期発見されることにより助かる確率が高い。がんは不治の病ではなく、健診で多くの人が助かりますが、症状が出てからでは遅いのです」。がん以外に日本人に多い死因である脳卒中や心臓病の要因「高血圧や糖尿病、高コレステロールも早期発見に力を入れ、一般への啓発活動もさかんに行っています」 と同氏。また 「船員という職業の傾向として、船上での作業はたしかに重労働ですが、短い移動距離なので、メタボリックシンドローム の方が多め。性格的には真面目な方が多いので、ここ数年のセンターによるメタボ解消の啓発活動が有効でした」。

同氏はさらに船員保険関連施設同士の結びつきについても「年に2回、東京本部でセンター長会議があるほか、技師長、事務長の会議、さらに社会保険医学会とタイアップで日頃の成果を発表する場もあり、みなさん熱心に参加しています」と続ける。

「がん検診では医用画像機器のはたらきが特に重要です。胃がんや肺がん検査がデジタル化になった当初のCR は解像度に問題があり、濃い影は強調されるのに対して薄い影が飛んでしまい、フィルムと比べると存在診断にはよいが質診断には適さない感が否めなかった。それがFPD登場により画像精度が飛躍的に向上し、かつ 『現在の画像と過去の画像とを並べて評価できる』 というメリットからもフィルムよりも使いやすくなったと感じます」

最後にセンターの今後の方針について。「基本を大事にし、がん検診受診者を増やし、信頼される施設にしていきたいですね。現在の健診では胃がん、肺がんのほか大腸がん、子宮がんや乳がん、肝臓がんや前立腺がんまでをカバーしていますが、現在一般健診項目に入っていない食道がんや膵臓がん、卵巣がん、胆のう・胆管がんにも注意をはらってほしいと思っています」


精度管理向上への注力により差別化を図る

千葉喜一郎氏
運営部長・千葉喜一郎氏。
「東日本大震災が厚岸方面でカキ養殖などに
甚大な被害をもたらし、太平洋沿岸部でかなり
被害がありました。北海道には船を係留する
場所が少なく、結果的に休漁期間中に(東北
地方に)置いていた船が被害を受けましたが、
幸いに立ち直りが速く、比較的沈静化が進ん
でいます」
Raffine導入の経緯について、センター運営部長・千葉喜一郎氏に話をお聞きした。「1999年の移転時から使用していたI.I.DR 装置4台が、10年以上経過して劣化から精度が落ち、管球交換など経費もかかっていたことから、2年計画で入れ替え実施に踏み切り、技師長はじめ放射線科スタッフともよく相談して導入を決定しました。もともとセンターの画像診断装置は使い勝手やメンテナンスの面から東芝社製品が主体になっており、同社にはきちんとした対応、要望を真摯に受け止め、提案してもらう良好な関係が築かれていた関係上、同社のFPD製品購入に合理性があることも大きな判断材料でした」

I.I.DR 装置の時代は 「不測の事態」 つまり故障が少なからず起こり、修理費を含めた予算計上が 「読 めない」 こともあったとのこと。FPD搭載装置導入にあたっては 「たしかに初期投資は高額ですが、修理が高額となるI.I. がないこと、管球やFPDを含むフルメンテナンス費が盛り込まれており、中途での高額な出費が発生しないこと、ランニングコストの面から、経営上も多大なメリットがあると判断しました」

降雪地帯ということもあり、巡回健診の繁忙期が4~11月で12~3月が閑散期となり、この期間は高齢者や先述の一般の方々が対象となる北海道。「先の高橋氏の話にもあったように船員数が減少傾向にある現状ですが、当センターの理念である、船員およびその家族の疾病予防と健康の保持増進を使命とし、各港へ健診車で出向き、健診事業を行っています。さらには一般の被保険者など(協会健保、組合健保や市町村国保)にも健診会場を設定し、健診を広げていきたい」と千葉氏は考えている。

今後のビジョンについて同氏は、「札幌には多くの競合する健診施設があり、その中で差別化を図っていくために、いっそう精度管理向上に力を入れていきたい。かつ受診者へのアンケートを定期的に行い、利用者の目線に立ったサービスを徹底追求します。健診後の特定保健指導にも力を入れ、保健師などのスタッフをそろえていきたいですね」 とふれる。

「技師の質向上があくまでも最優先ですが、センターのスタッフはみなモチベーションが高く、学会や研究会に積極的に出かけて研鑽を積んでいます。年2回、各科が主体となった研修会を開き、外部から講師をよぶこともありますが、スタッフ全員が自分に直接関係しない分野もしっかり聴講し、業務に結びつけていこうと意欲満々。われわれ事務方もサービス面で、お客さんをしっかりフォローしていきます」


導入して強く感じたデジタル化の大きなメリット

高橋伸之氏
放射線科技師長・高橋伸之氏。
「センター移設先の建物の梁構造から大幅な
工事は避ける必要がありましたが、コンパクト
設計のRaffine はこの点をみごとにクリア。
搬入時の手間とコストが軽減されました」
センターと東芝社との関係は、I.I.DR4台を導入した1999 年までさかのぼる。放射線科技師長・高橋伸之氏(以下:高橋伸氏)が 「当時はデジタル化にそれほどのメリットがあるとは思っておらず、『フィルムコスト削減という時代の流れ』 程度の認識でした」 と振り返る。

そんな折、「東芝社が開催した装置デジタル化のもたらすメリットに関する勉強会に参加し」、これをきっかけにデジタル装置を導入。「撮った画像がリアルタイムでみられる。つまり 『読影医が診断する画像』 を検査中にみられるわけで、透視撮影中に気づかなかったものが静止画で写ったら、再撮影で本物の病変かどうかを確認できる。何度やっても同じように出るという再現性があれば読影医に伝え、自信をもって 『精密検査に行くべき』 と判断できますし、逆に何度やっても同じものが出ないのなら偽像で精密検査不要とする判断の根拠になり、無駄な検査を避けられます。またフィルム時代は、100人ほどの撮影を行えば、 順番ごとにフィルムを並べて読影に備える作業に30分ほどかかっていました。デジタル装置ならフィルム整理の手間が大幅に省ける。実に大きなメリットと感じました」

「故障という観点からも、デジタルの恩恵は大きい」 と語る高橋伸氏。「フィルム装置は自動現像機が故障した場合、撮った画像を駄目にしてしまうので再撮があり得た。つまり撮影終了後に 『結局撮れませんでした』 という事態に至ることがあったのですね。便秘の心配をしつつバリウムを飲み、ゲップをがまんしてやっと 『ああ検査が終わった』 と思ったのがすべて無に帰してしまうのは、受診者にとって最もいやなことですから。一方でデジタル装置はフィルム搬送系のトラブルがなく、また自動現像機も必要なく撮影と同時にハードディスクに画像が保存されるので、再撮影のリスクがかなり低くなりました」。同氏はまた読影医の 立場からも「過去画像がただちにみられて、現在の画像との比較が容易にできる点が大きいでしょう。デジタルシステムは、前回画像を自動出力しますので、読影医が気にした部位が昨年はどうだったかが瞬時にわかります」と指摘する。

このようにデジタル化のメリットを 「運用面で強く感じた」 高橋伸氏だが、「フィルムに比肩する画質を期待するのはまだむずかしかった」。それでも 「総合的にはフィルムよりも精度は高くできると思っていましたし、もう一段上、精密検査に負けないレベルの画像を出して勝負したいという気持ちもあり」、2005年にFPD搭載C アーム装置Ultimaxを導入する。「静止画はよくなりましたが、“検査中に病変を拾いあげる” という私たちの考えからすると透視像に不満がありました」。それがRaffineでは「静止画像はもちろん、透視画像の画質もかなり向上した」 という判断から導入決定に至る。

Raffine導入後の感想について 「透視像は期待どおりI.I.DR に負けない画質で、静止画も見劣りしない」 とする高橋伸氏。画質がよくなった分、データ容量が増大しサーバ負荷が上がるという問題も生じてくるが、「いまのところは施設内のサーバでまだまだ行ける状況」 で、「圧縮せずにサーバに入れているところに活路がある。部分圧縮技術を使うことで画質を落とすことなく、圧縮してサーバ容量の余裕を増やすことも東芝社に要望しています。1999年から1つも落とさずに入れてあるままなので、他施設よりは余裕があるのかな、と思っています」


「きちんとした像をつくらないと厳しく指摘される」
FPD画像の厳しさを痛感

画質へのこだわりについては、高橋伸氏の以下の言葉が印象的だ。「高齢者の場合、バリウムを付着させることはなかなか困難ですが、静止画を見る際に、FPDは 『バリウムがきちんとついていない』 ことをはっきり示してくれるのですね。FPD以前なら 『なんかボヤけているからバリウムがついていないかも』 というレベルだったのが、いまは鮮明に出る分、造影効果がきちんと上がった状態ではないことを画像がしっかり見せつけてくる。こちらも 『きちんとした像をつくらないと厳しく指摘される』 とFPDに鍛えられる面は多分にあります」

高橋伸氏自身のモットーは 「検査時に見逃したがんを読影の時に拾い上げるのは至難の技」。「低い隆起がある場合、バリウムを薄く流すと “はじき像” が出ますが、大きくドンと流すと見えない。バリウムの流れを注意深く観察すると隆起の度合いが把握できます。これは動画でないとわかりません。検査時間は1人10分ほどかかりますが、読影医は読影にそれほど時間をかけられず、せいぜい1~2分。また読影医が見られるのはわれわれがつくった静止画だけで、動画はみられない。このことから異常をキャッチするタイミングは撮影時がいちばん理にかなっている、と私は考えています。東芝社は、このような考えをよく理解してくれた上でさまざま提案くださることが多く、非常にうれしく、また大いに助かっています」

撮影技術向上に努力を惜しまない姿勢は、「撮影画像への撮影者名記入が必須」 という点にもうかがえる。「撮影画像に責任感をもたせるための、センター伝統のルールです。逐年健診では、がんが見つかれば必ず過去画像が存在する。その過去画像のときになぜ拾い上げられなかったか――たとえばバリウム検査で死角になりやすい箇所だったとか――を、がんの遡及的検討として突きつめていけば、健診精度が確実に向上する。画像に名前が入っていることにより、第三者的な反省ではなく 『自分が見逃した』 ことをより深く、たえず意識させるわけです」
杉沢 猛氏
放射線科主任・杉沢 猛氏。
東芝社のメンテナンスの素晴らしさについて
ふれ、「巡回も含めて、健診施設では1台で
も故障してしまうと、受診者の信頼をその場
ですぐに失ってしまいます。でも同社の場合、
トラブル時でも電話すると素早い対応をして
いただける。信頼のおけるパートナーと思っています」



集合写真    Raffine操作卓
Raffineを囲んで放射線科スタッフ集合。
「みなモチベーションが高く、学会や研究会に積極
的に出かけて研鑽を積んでいます」(千葉氏)。
  Raffine操作卓。
左側のシステムモニタはグラフィックを多用し、
直感的に操作できる使いやすさ。



掲げる目標はずばり 「日本一」

透視収集機能が画像処理装置本体で可能となり、たとえば整形領域では関節の動きなど静止画より も動画の方が理解しやすい、などのメリットがある。今後は読影に使える 「診断のための透視」、「透 視画像中心の検査」 の可能性も期待できるのだろうか。

「センターではさまざまな場所で動画症例を発表し、検査中の動画を見せて異常所見を問う試みも行っています。動画を含めることで、症例検討に撮影技術も含まれるようになるのです」 と高橋伸氏は語る。動画を重視した検査は透視撮影時間が長くなると思いがちだが、「ここがデジタルのよいところで、たしかにバリウムの動きは透視観察が必要ですが、静止状態も観察する必要があります。フィルム装置ではそういう場合も透視により確認しなければなりませんが、デジタルでは撮影画像をチェックすることで代用できるので、透視だけでなく静止画もふまえた上で病変を拾い上げることができるのです」

高橋氏が掲げる目標はずばり 「日本一」。「健診を真面目に受けようとする受診者にとって最もふさわしい施設、『どこで受けたらいいか』 と考えたときに真っ先に選ばれる施設になりたい。そのためには偽陽性と偽陰性をしっかり見分け、早期がんは、より小さい時期にしっかり見つけ、よほどの妥当性がなければ無駄な精密検査に回さないことによって、いま全国平均5~10%といわれる精密検査を1%にする――その目標に近づこうという意識を強くもっています」

レディースフロアー
「すべて女性スタッフに対応させ、乳がん、子宮がんの検診については
曜日を決めて女性の医師 に担当してもらうようにしています」(千葉氏)。



船員保険 北海道健康管理センター

 
〒060-0002
札幌市中央区北2条西1丁目1番地 マルイト札幌ビル4・5 階
TEL 011-218-1655(代表)  FAX 011-219-1725
http://www.sempos.or.jp/kk/hokkaido/
装置構成:地上局 Raffine 2台、Ultimax 1台、他TV2台、衛星局 Aitella1台(さらに1台受注ずみ)(2011年11月現在)

   北海道健康管理センター